✅ はじめに
Spring Bootで「定期的な処理」を実行したいとき、最もシンプルに実装できる方法が @Scheduled アノテーションです。
このガイドでは、
@Scheduledの使い方- cron式やdelayの違い
- 複数メソッドの挙動（並列 vs. 順番待ち）
- スケジューラの並列化設定方法
など、現場で使える知識を丁寧に解説します！
✅ 事前準備：スケジューリングを有効にする
まず、@Scheduled を使うには明示的にスケジューラ機能を有効化する必要があります。
import org.springframework.boot.autoconfigure.SpringBootApplication;
import org.springframework.scheduling.annotation.EnableScheduling;
@SpringBootApplication
@EnableScheduling // ← これを忘れると定期処理が動かない！
public class MyApplication {
public static void main(String[] args) {
SpringApplication.run(MyApplication.class, args);
}
}✅ 定期実行処理の作成方法（@Scheduledの基本）
import org.springframework.scheduling.annotation.Scheduled;
import org.springframework.stereotype.Component;
@Component
public class SampleScheduler {
@Scheduled(fixedRate = 5000) // 5秒ごとに実行
public void runTask() {
System.out.println("実行中: " + java.time.LocalTime.now());
}
}✅ Bean登録されているクラスである必要がある
@Scheduled を付けたメソッドは、Spring管理下の「Bean」でなければ実行されません。
🔍 Beanって何？
Beanとは、SpringがDI（依存性注入）の対象として管理するインスタンスのこと。アプリの起動時に自動的に生成・登録されます。
🔧 Beanとして認識されるには？
@Component@Service@Repository@Configuration
などのアノテーションを付けることで、自動でBean登録されます。
@Component // これがないと動かない！
public class MyScheduler {
@Scheduled(fixedRate = 10000)
public void run() {
System.out.println("10秒ごとに実行！");
}
}✅ 各種 @Scheduled のオプションと違い
🔁 fixedRate：開始時間からの間隔で実行（非同期でも可）
@Scheduled(fixedRate = 5000)
public void task1() {}🔁 fixedDelay：前回処理の「終了から○ms後」に実行
@Scheduled(fixedDelay = 5000)
public void task2() {}⏱ initialDelay：最初だけ遅らせてから開始
@Scheduled(initialDelay = 3000, fixedRate = 10000)
public void task3() {}✅ cron式を使った柔軟な定期処理
@Scheduled(cron = "0 0 0 * * *") // 毎日0時に実行
public void runDaily() {}| 曜日 | 指定方法 |
|---|---|
| 月〜日 | MON〜SUN |
| 毎分 | 0 * * * * * |
| 毎週月曜9時 | 0 0 9 * * MON |
✅ デフォルトは単一スレッド！複数メソッドは順番待ち！
Spring Bootでは、@Scheduled メソッドはすべて単一のスレッドで実行されます。
つまり？
複数の @Scheduled メソッドが同じタイミングで起動しても、一つずつしか実行されません。
@Scheduled(fixedRate = 1000)
public void taskA() {
System.out.println("タスクA開始");
Thread.sleep(3000); // 時間かかる処理
System.out.println("タスクA終了");
}
@Scheduled(fixedRate = 1000)
public void taskB() {
System.out.println("タスクB実行");
}🧨 上記の例では…
taskAが3秒かかると、taskBの実行は そのあと（順番待ち） になる。
❗ これは意図しない「実行遅延」や「詰まり」の原因になります。
✅ 8. スケジューラを並列化（マルチスレッド）する方法【詳細解説】
🔒 デフォルトでは「シングルスレッド」
Spring Bootの @Scheduled は、特に設定しない場合、1本のスレッドしか使われません。
そのため、複数の @Scheduled メソッドが同じタイミングで発火しても、順番に1つずつしか処理されないのです。
🧪 例：2つのタスクが重なると…
@Scheduled(fixedRate = 1000)
public void longTask() throws InterruptedException {
System.out.println("LongTask START");
Thread.sleep(5000); // 処理に5秒かかる
System.out.println("LongTask END");
}
@Scheduled(fixedRate = 1000)
public void quickTask() {
System.out.println("QuickTask");
}実行結果（一部）
LongTask START
（1秒後） ← QuickTask は実行されない
（5秒後）LongTask END
QuickTask ← ここでやっと実行！👉 QuickTask が「後回し」になり、定期実行にならない！
✅ 解決策：ThreadPoolTaskScheduler を使って並列化
SchedulingConfigurer インタフェースを使い、スケジューラのスレッドプールを自分で定義すれば、複数タスクを同時に実行できます。
🔧 実装例：SchedulerConfigクラス
import org.springframework.context.annotation.Configuration;
import org.springframework.context.annotation.Bean;
import org.springframework.scheduling.annotation.SchedulingConfigurer;
import org.springframework.scheduling.concurrent.ThreadPoolTaskScheduler;
import org.springframework.scheduling.config.ScheduledTaskRegistrar;
@Configuration
public class SchedulerConfig implements SchedulingConfigurer {
@Override
public void configureTasks(ScheduledTaskRegistrar registrar) {
ThreadPoolTaskScheduler scheduler = new ThreadPoolTaskScheduler();
scheduler.setPoolSize(5); // 並列に最大5スレッドまで処理可能
scheduler.setThreadNamePrefix("scheduled-task-");
scheduler.initialize();
registrar.setTaskScheduler(scheduler);
}
}✅ 効果：
- 各
@Scheduledメソッドが同時に別スレッドで実行される - 時間がかかる処理が他の定期タスクをブロックしない
✅ 重要ポイント
| 項目 | 説明 |
|---|---|
setPoolSize(int) | 並列で実行できる最大スレッド数（多すぎ注意） |
setThreadNamePrefix | ログなどでスレッド名が見えるようにすると便利 |
initialize() | スケジューラを起動する前に必ず呼ぶ |
registrar.setTaskScheduler() | 作成したスケジューラをSpringに登録 |
📈 スケーラブルな設計になる
この方法を使えば：
- 各
@Scheduledメソッドが独立して並列に実行可能 - 処理が重いスケジューラが他に影響しない
- 複数のタスクを同時に定期実行できる
⚠️ スレッドを増やすとサーバーにどれくらい負荷がかかるのか？
ThreadPoolTaskScheduler の setPoolSize() でスレッド数を増やすことで、確かに並列実行が可能になりますが、次のようなリスクや注意点もあります。
🔻 1. メモリ消費が増える
- スレッド1つあたり、1MB〜数MB程度のスタックメモリを消費します。
- 10スレッドなら約10MB〜30MB、100スレッドなら数百MB以上に。
- サーバーのメモリが潤沢でない場合、OutOfMemoryErrorのリスクも。
🔻 2. CPUへの負荷が高くなる
- スレッド数を増やしても、CPUコア数を超えると実行は待機状態に。
- 例えば、4コアのCPUに20スレッドを同時起動させても、4つしか実行されず16は待ち状態。
- 無駄にスレッドを増やすとコンテキストスイッチ（切り替え）コストが増えるため、逆に処理が遅くなる可能性あり。
🔻 3. スレッド間の同期・ロックが複雑化する
- 並列化が進むと、スレッド間で同じリソースにアクセスする場面が出てきます。
- その結果：
- データ競合（race condition）
- ロックによるデッドロック
- 排他制御によるパフォーマンス低下
- ➜ マルチスレッドにするほど設計とテストが難しくなる
✅ 適切なスレッド数の目安
| サーバー構成 | おすすめのスレッド数（例） |
|---|---|
| ローカルPC（4コア/8GB） | 2〜4程度 |
| 小規模サーバー（2vCPU/4GB） | 2〜3程度 |
| 商用サーバー（8vCPU/16GB〜） | 5〜10程度（要チューニング） |
💡 重要：PoolSize = コア数 × 2 程度を上限の目安とするのが一般的です
✅ スレッド数を増やす際のチェックポイント
- ✅ 並列処理する「タスク」の処理時間と重さを見積もる
- ✅ アプリケーションが使用する他の非同期処理（例：@Async, ExecutorService）とバランスをとる
- ✅ JVMの最大メモリやCPUコア数に合わせて上限を設定
- ✅ 本番環境ではモニタリング（JVM, CPU, Heap, スレッド数）を必ず導入
✅ 9. よくあるトラブルと解決法まとめ
| 問題 | 原因 |
|---|---|
@Scheduled が動かない | @EnableScheduling を忘れている |
| メソッドが呼ばれない | @Component などが付いておらず Bean登録されていない |
| 処理が遅延する・詰まる | 単一スレッドで順番待ち → スケジューラの並列化が必要 |
| 時間がズレる | cron式が UTC基準になっている → タイムゾーン指定が必要 |
✅ 10. まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
@Scheduled を使うには | @EnableScheduling が必要 |
| Bean登録が必須 | @Component や @Service をつけよう |
| デフォルトは1スレッド | 複数メソッドで詰まりが発生 → 並列化設定が有効 |
| 並列実行が必要なら | ThreadPoolTaskScheduler をカスタム設定 |
| cron式 | 毎日・毎時など柔軟なスケジュールが可能 |
コメント